Wednesday, March 01, 2017

感謝!

最後の投稿から2年半振りの投稿ですね。まだこちらをご覧になってくださる方がいらっしゃるのか、半信半疑の思いで綴っております。ちょっと長くなるかもしれませんが、お付き合いいただけたら嬉しく思います。

この2年半は色々とありました。

前回のブログの記事をアップした後、僕はドイツ語学校に通い始めました。シリア難民の人達や普段あまり交わることのない東欧の方と一緒に、時にはずる休みもしながら毎朝学校に通い、休み時間にはそのシリア人の人達から戦場下にある彼らの状況を聞いたりする、というドイツ語学生生活でした。ドイツ語が話せるようになったことはもちろん嬉しかったけど、自分の生まれ育った町が壊され、常に生と死と共に生きる恐怖を味わい、今は家族とバラバラになっていても、その先の希望を信じて生きている明るさというか、今置かれている環境を一生懸命に生きようとする難民の彼らの生き様を見聞き出来たことは、かけがえのない経験となりました。

(勿論、そこで学んだドイツ語は、ドイツ語学校が終了した数か月後からもの凄く必要になるのですが・・・)

特に仲良くしていた中の2人、シリア人のサマー君とオサマ君の兄弟。彼らは「ドイツ語学校を卒業したら、大きな町に移って仕事を探すんだあ。そしたら家族もドイツに呼べるしなあ。」と言っていたし、その後僕の住む田舎町では見かけることもなくなってしまったのですが、元気でいてくれるといいなあ、とそんな風に、時折彼らのことを思い出します。

ドイツでは受け入れ態勢が十分に整わないままに、沢山の難民を受け入れてしまったことが社会問題になったようですが、僕が今住んでいるドイツの村?でもシリア人の難民としてドイツにやってきた人たちが村のスーパーで普通に買い物をしている姿を見ると、ドイツは凄いことをしているんだなあ、と自分の生まれ育った国ではないけれど誇らしげに感じてしまいます。


と、無事にドイツ語学校は卒業したわけですが、そのあたりに、僕が勤めているドイツの大学の打楽器科の主任が交通事故にあってしまい、2年近く学校の仕事が出来なくなってしまったのです。そんなわけで、急にどっとその主任のしていたお仕事が、僕ともう一人の同僚にのしかかってきたわけですが、この仕事量と責任がまた物凄くて・・・習いたてのドイツ語は、学校の事務の方とのやり取りでかなり役に立ちました。

その主任はようやくこの4月から職場復帰できるようですが、この2月までは自分の事と学校の事、更に何となく圧し掛かっている責任にバランスが取れない状態が続いて、ちょっとおかしくなっていたかもしれません。唯一の救いが、大学でのプライベートレッスンの生徒とのひと時で、僕や同僚を心配してくれる生徒なんかもいたりして、それが無ければ本当に登校拒否でも起こしてしまいそうでした。


そんな中でも、かなり長い期間自分の中で温めてきた、ピアソラの作品のみを集めた「ピアソラ・オン・マリンバ」のCDの出版に加え、どうしてももう一枚作りたくなって「クラシックス・オン・マリンバ」と題して、ピアノ、チェロ、バイオリンや合唱のために書かれた作品を集めたものも、同時に録音を進め、そしてドイツのレーベルから出版することができました。

このCDの出版にも紆余曲折があり、中々思い通りにいかない事に、悲しくなったこともありましたが、それでも出版してしまうと、そういう想いもいい思い出になってしまうのですね。共演者や、CD出版に協力してくださった方々には多大な迷惑をかけてしまうことになったのですが、そういう時期も経て完成したCDは僕の音楽人生の中でとても大切なものとなりました。共演してくださったピアノの車野桃子さん、マリンバの誉田広耶君、バイオリンの佐藤友香さんをはじめ、録音を担当したパブット音響音楽事務所さん、編集をしてくださったCaveman Musicの前川さんをはじめ、ご協力してくださった沢山の方々、CDを手に取り聞いてくださった方々に、改めて心から感謝いたします。


そのCDリリースを記念して昨年8月地元秋田・大館市での公演を皮切りに、京都市では府民ホールという音響の素晴らしいホールでの2回公演、先月2月には東京・王子ホールでのリサイタル、京都の青山音楽記念館での公演という、大きな舞台を踏ませていただきました。

特に先月の東京・京都公演は、特別なものとなりました。

自分の音、音楽はもちろん自分と共演者である坂野さんが一緒にリハーサルをして積み上げてきたものが形になっている部分もあるのですが、舞台上で自分がマリンバを介して奏でている音が、共演者であるピアノの坂野さんの音楽と混ざり合い、会場にいる聴衆の方々の想いと一緒になって、そこで初めて音楽として創り上がっていっているという、何とも不思議な感覚に包まれながらのひと時となったのです。音楽を、会場の方とその場で一緒に創り上げているという感覚です。

これまでに色々な人と出会い、経験を重ね、そこから様々な想いを抱き、時には悲しく、悔しく、時には嬉しく、幸せで、そして時には体がいうことを聞かないくらいどーっと疲れて動けなくなってみたり、と思ったら驚くほど元気になってみたり・・・それでもって、そんな自分をどんな時でも支えてくれる人達がいて。。。

僕のような半ば社会の外れもの?(ほぼ自由人)にさせてもらえているからこそ、そういう様々な、辛く感じる物事も幸せに感じる物事も自由に自分なりに感じさせてもらい、そして自分という存在を感じる時間を与えてもらいながら、時には大学で生徒と話をして自分という存在を確かめさせてもらったり共有させてもらったりすることが力となり、こうやって舞台に上がって音楽をしている事、その僕のすべてがその会場にいるお客様に肯定されたように感じた、そんなひと時だったのです。

今回のステージを踏むまでも、色々な葛藤や不安もありました。
(東京公演に関しては、特にチケット販売が不安でした。。。チケット販売に協力してくださった方、ご来場いただいた方、いらっしゃらなくてもとりあえずチケットだけは買ってくださった方に、心から感謝いたします。)

あのステージは、僕が練習を重ねてきたものも一部あるのかもしれませんが、会場一杯のお客様の温かい思いと集中力、演奏会にはいらっしゃれなかったけど演奏会の成功を願って下さっていた方々の想い、そして演奏会を円滑に成功させるために動いてくださっていたホールやマネージメントの方々の想い、そして共演者である坂野伊都子さんのお力添えなくしては成しえなかったことです。

この感謝の想いを述べるのに、ここまで長くなってしまいましたし、言葉で表現しきれないくらい胸はいっぱいなのですが、まずは本当に本当にありがとうございました。

(そして、やっとこのブログに戻ってこれたことも嬉しく思います。)

これから、4月の秋田市での公演、5月、6月にはミュンヘンやベルリンでもCDリリース記念公演をいたします。今度こそは写真付きでブログをアップしたいと思っていますので、引き続き、応援していただけたら幸いです。


追記
先日の京都公演から2曲、Youtubeにアップさせていただきましたので、
興味をお持ちの方は、下記のリンクからご覧になっていただけたらと思います。

カルメン・ファンタジー/フランツ・ワックスマン
https://www.youtube.com/watch?v=xOuwh8cp18s

ブエノスアイレスの冬/アストル・ピアソラ
https://www.youtube.com/watch?v=WOBlts72M14